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昼間のヒルマ

  • 執筆者の写真: gen kushizaki
    gen kushizaki
  • 5月28日
  • 読了時間: 6分

更新日:5月31日

久々の武道館!


を通り過ぎましてw


本日はここ!


久々の近美!!



あ、いえいえニトリのカーテンセールじゃありません

近年アート界隈で物議を醸していたヒルマ・アフ・クリントの日本初、いえアジア初の大回顧展なんですが

今もしかすると美術史が書き換えられるんじゃないかと界隈がザワついている画家の大回顧展なのです


というのも今まで「抽象画」といえば我が師カンディンスキーやモンドリアンでしたよね

でも実はこのヒルマ・アフ・クリントさん、カンディンスキーより前に抽象画を描いていたんですよ


もちろん随分昔にというわけではなく、カンディンスキーらと同時代に活動していたので、あくまで数年のタイムラグなんですが、抽象画の登場前にスウェーデンの女性が描いていた事実はとても大きな意味を持ちます


じゃあ何故今頃になって騒がれているのかと言いますと、それは「誰も知らなかったから」ですw

ヒルマさんの存在が世間に知られたのってつい最近なんですよ

じゃあなぜ知られてないのかって?それは「出すな」というのが本人の遺言だったからですw


ので死後70年経った2013年、ストックホルム近代美術館で初の個展が開催されました

それを皮切りに巡回展が行われて少しずつ世界に広がったんですが、あくまで北欧での話し。

その噂を知ったニューヨークのグッゲンハイム美術館が2018年に回顧展を開催したら60万人という同館最多の動員を記録し、ヒルマさんの名はここから一気にメジャーになりました


それを受けて2019年に長編ドキュメンタリー映画「見えるもの、その先に ヒルマ・アフ・クリントの世界」

2022年には伝記映画「Hilma」が制作されるなど、まるで大型新人かのように近年盛り上がりつつあります


ヒルマ・アフ・クリント


ヒルマさんの面白い所をまとめると要点は3つ。

1点目は最近認知されたのに蓋を開けたらカンディンスキーより早かったということ

2点目はそもそも販売目的で描いておらず、1000点以上の作品や資料がどっさりあること

そして注目の3点目は「交霊術」で描いていることですw


なんとヒルマさんは近代神智学で有名なヘレナ・P・ブラヴァツキーを師事している神秘主義の人でして、神と交信し高次の霊的存在からメッセージを受けて、トランス状態での自動書記にて作品を描くのです

まあ簡単に言うとコックリさんで絵を描いたってことですね


1862年ストックホルムの裕福な家庭に生まれたヒルマさん

早くから画家志望で王立芸術アカデミーも優秀な成績で卒業し、職業画家としても成功していました


ので元々は普通にアカデミック


風景画も


人物画も


至って古典的


要はちゃんと学校を出てちゃんと絵が描ける、いわゆる普通の職業画家でした

が17歳の頃に妹を亡くした事がきっかけで、少しずつスピリチュアル系に傾倒するようになります

というのも19世紀末って神秘主義とか神智学といったスピリチュアルブームでもあったんですよ


産業革命以後、テクノロジーの進化も安定に入ると、どうしてもそれに対するカウンターが発生しますよね

波動とか素粒子とか無意識とか心霊など「目に見えない物をどうとらえるか」というのが時代の流れでした

特に美術なんかはそれが顕著に現れており、もうこの頃は「リアルに描こう」なんて誰も思ってなかったので、抽象画が登場するのも普通に頷けます


スピリチュアルに傾倒しながらもあくまで職業画家として活動していたそんなヒルマさんなんですが、40歳に差し掛かる頃、ついにエンジン始動します


スタートは1904年

同じスピリチュアル系の友達4人と作ったサークルで行っていた交霊会でついに啓示を受けました

そこから10ヶ月ほど菜食主義と規律的な生活を「浄化期間」として自らに課し禊ぎを済ませたのち

1906年から1915年まで10年に渡って「神殿のための絵画」というシリーズを描き始めます


「薔薇シリーズ 1」


「薔薇シリーズ 2」


「薔薇シリーズ 3」


で次が今回の目玉にもなっておりました「10の最大物」シリーズ


グルッと四面展示


今回のお告げは「楽園のように美しい10枚の絵画」とのことで、人間の生涯を幼年期、青年期、成人期、老年期の4つに分けて描かれた作品


結構デカいです


面白いのは素材でして紙にテンペラ。なぜなら「乾くのが早いから」とのことw

この10点を2ヶ月で描いたそうな。近くで見ると塗りもザックリしてたりシワシワだったり足跡が付いてたりと、作品としてのディテールよりはあくまで"お告げ"を描写することに重きがあったのがわかります


次が「七芒星シリーズ」


次が「知恵の木シリーズ」


「白鳥シリーズ」


最後が「祭壇画シリーズ」


神殿のための絵画 全193点


「神殿のための絵画」というタイトルの通り、ヒルマさんはいつか神殿を建てて、その中に飾る為の絵を描き続けていたので、販売する目的で描いてないからそもそも世に出回らないんですよ

もちろん売るつもりが無いだけであって「広めたくない」わけではないので、シリーズが完成したのちは神殿を作る為のスポンサー探しや活動を開始するのですが、残念ながらそれは叶いませんでした


とはいえここで活動が終わるわけではなく、これ以降は人智学の創始者であるルドルフ・シュタイナーを師事し、精神世界に自然科学を取り入れた新しい展開を模索し始めます


原子レベルから


数学的な感じとか


幾何学的な方向へ


最後は水彩へ


1944年、1000点を超える膨大な作品や資料を親族に託し「私の死後20年は作品を公開しないように」と81歳で亡くなったヒルマさんですが、スピリチュアルブームではあったにせよ、当時ではまだまだ理解されない解釈を未来に賭けた心の強さにも少しグッときました。てか自信があったのかもしれませんね

僕は正直懐疑的だったんですけど、終わってみたらすごく良かったです


ヒルマさんの面白い所ってトピックの多さにあるのかもと思いました

実はカンディンスキーより早かったとか、コックリさんで自動書記とかだけでも十分面白いんですけど

そもそも「これって抽象か?」という話しでもありますよね。案外具象だったりしますしね

でも今回の回顧展を見てよくわかったのは、これって抽象とか具象、もっというと美術とか絵画とかそういうのじゃなくて、高位から受け取ったメッセージを概念化して視覚的に落とし込み、「視覚言語」という新たなコミュニケーションを確立しようとしようとしているんですよね


現にこれらって「なんとなく」で描いてるんじゃなく、当たり前ですがヒルマの中では全部意味がありまして

142冊、2万6千ページに及ぶノートには「この線はこういう意味で」みたいにビッシリ書いてあるんですよw

作品は女性っぽくてマリメッコの新作みたいに見えますが、なかなかパンチが効いてる人ですよね


結構おすすめです


ザックリまとめ


せっかく近美まできたなら


向かいの江戸城跡にもぜひw


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